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交流・湯来

「ユキさん」
「ゆらちゃん?う~ん」
声をかけるとめずらしく、ユキさんはちょっと難しそうな顔をした。
「どうかしたですか?」
「そろそろ、ユキのことちゃん付けで呼んでほし~って思って。どう?」
「ふむ」
そう言われて、考える。
特にさん付けで距離を離しているつもりはなかった。けれど、ちゃん付けに抵抗があるわけでもない。
「ユキちゃんです?かのこちゃんです?」
「ゆらちゃんの好きな方で!」
「じゃあ、ユキちゃんにするです。ユキちゃん」
「うんうん、なあにゆらちゃん」
ユキちゃんは嬉しそうに顔を向ける。
「今日の小テスト、範囲変わるみたいで……いっしょにヤマ張るですか?」
そう言うと、ユキちゃんはみるみる表情を変えて、慌てて教科書を机に広げた。
「ゆらちゃん!やるよ!」
「はい!ユキちゃん!」
ここはどう?う~ん出そうですかね……
チャイムが鳴って先生が教室に入ってくるまで、わたし達はどこが出そうかを必死に考えたのだった。

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