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交流・千寿
「どうしよう百合咲さん、私ここからここまで全部分かんない……」
「奇遇ですね、ゆらちゃんもです……」
定期テストの勉強期間。応援部で主催される勉強会に来てくれた千寿さんと、一緒に顔を青くする。
今回は範囲が難しすぎる。最初はまだ優しかったのに。なんて呟いても、現実は変わらない。
「ひ、ひとつずつ解いてこっか」
「そうですね、押忍」
ああでもない、こうかもしれない、ここに公式があるかもしれないと、いっぱいいっぱい考えながら解き方を理解していく。
たまにくおんくんが呆れつつ教えてくれることを必死にメモして、一旦休憩という言葉に甘えて大の字に寝っ転がった。
「百合咲さん、一旦おつかれ~」
「おつかれさまです。ふはー……」
頭がもうパンパンで、休憩後もちゃんと勉強が出来る気がしない。
みんなすごいです……と体を起こすと、千寿さんが「はい」と個包装のチョコレートを渡してくれた。
「ありがとです。むぐ……」
「あはは、食べるの早いね。私も食ーべよっと」
千寿さんも一つとって口に入れ、「甘くておいし~」と幸せそうな顔をする。
「休憩後も頑張ろうね、百合咲さん」
「はい。頑張るです。押忍」
ちょっとだけ、頭も回復してきた気がする。
伸びをして、また教科書に二人で向き合った。
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